みんなの日記帳

問わず語り8  No.373

1978年4月、おいらが仙台にいった頃今の仙台駅は前年に建てられたばかりでピカピカだったが、あるのは駅本体だけだった。エスパルは建築中、駅前のデッキも小さく、東北新幹線が開業したのはオイラが大学を卒業した1982年のことである。だからオイラのいた頃の駅周辺は常に活気ある槌音が響いき、。まさに発展する町という感じだった。
駅から前を見ると正面に南町どおり、やや左側に10階建てのエンドーチェーンがそそり立ち、その大きさと活気で、田舎者を驚かせ、都会の象徴だった。そこは地下1階から10階まで洗練されたもので埋め尽くされ、それを求める人があふれていた。買い物をするのはいつもエンドーチェーン、お金がないので買い物はできなくてもエンドーチェーン。不思議なことにこんな華やかなエンドーチェーンの足下北川にリアカーしか通れないような道があり、その先に戦後の闇市を思わせる露店がいっぱい並んだ仙台朝市があった。
また、仙台駅を挟んで300mもないところには前回書いた軒の低いコールタールを塗ったトタン屋根の粗末な家並みがあり、その先にお寺の中の十字架の貧乏学生寮がある。昭和のあの頃、駅を挟んで両極端な世界が存在したのだ。今のヨドバシカメラなどは想像もできない時代だった。
エンドーチェーンの1階の中央にサテライトスタジオがあり、そこから毎日TBCラジオの生放送が行われていた。いつもはアマリ有名ではないゲストが出演しており、硬派を気取っていたオイラは、それを客席で見るのは気恥ずかしく、吹き抜けの2階の手すりに寄りかかってみていた。放送以外でも歌を数曲歌ったり、サイン会などもしていたのだ。数ヶ月前まで「ミーキチャーーーン」などと叫んでおいて硬派もないのだが。
そんな頃、情報が入った。
「サテスタに石川ひとみが来るってよ」 当時の石川ひとみは「待ち伏せ」で大ブレイクする前で「レッツゴー ヤング」の司会もしていなかったと思う。でも、千葉君をはじめとし、オイラの周りには「右向け右」や「胡桃割人形」の石川ひとみが可愛いと大評判だったのだ。石川ひとみがサテスタに来る当日、平日にもかかわらず、当然のごとく大学をサボり、開店前のエンドーチェーンに並び、開店と同時にサテスタの一番前の真ん中に座る千葉君とおいらがいた。TBCの生放送はお昼からにもかかわらず、午前中からサテスタの座席は男子大学生だと思われる群衆で満席となっていた。「おまえら学生やろ。今日は平日やろ。学校はどうした。親が泣いているぞ。」などと毒づきつつ、千葉君とオイラは石川ひとみの登場を待っていたのだ。
正午過ぎ、匂いプンプンたる野獣の群れに石川ひとみは現れた。「ウォーーー」と鳴り響く野獣の声、見上げればサテスタに入りきれなかった連中が吹き抜けの2階にも折り重なっている。1階は通路まで塞ぐほどの男 男 男 … … 。前を見れば到底人間とは思えない美しさの石川ひとみ。大きな瞳、陶器のような肌、ガラス細工のように繊細な四肢。呼吸する人形だ。そこから発せられる声も女神のごとく甘やかだ。今までにた人間の内圧倒的に一番の美しさだ。
おいらはそれまで、アグネスチャンとキャンディーズのみきちゃんのファンであり、二人と握手もした仲だ。しかし、美しさというかきれいさというか、ととのイカといえば石川ひとみが最高であった。それ以上を求めるなら現代のガッキーこと新垣結衣の登場を待つしかないだろう。と思う。
生放送が終わり、サテスタに集まった観客だけに歌を歌ってくれた。男達はもう、魔術にかかったように取り込まれている。恒例のサイン会が行われたかは覚えていない。オイラは石川ひとみのサインは持っていない。同じサテスタでもらった横綱三重ノ海屋大関琴風のサインや押しつけられた主将の福田武雄のサインをなくしたことは覚えているので、なくした覚えもない石川ひとみのサインは最初から持ってはいないのだろう。
確かに千葉君もおいらも石川ひとみの美しさに魅了された。だからいい年をしてNHKの人形劇「プリンセスプリンプリン」も毎日見た。でも、それまでだった。ユーミンが作った「待ち伏せ」が大ヒットした頃にはほとんど興味がなかった。「あっ、あの子がヒットを出したのね。よかったね」と他人事のようだった。
オイラはアグネスチャンのLPレコードは全部持っていたし、キャンディーズのDVDも持っている。今でも大ファンだとも言える。しかし、石川ひとみのファンかと聞かれれば、「ああ、そんなときもあったかな」と答えるだろう。
大学生活一年が終わり、あの学生寮が閉鎖になる時、おいら達寮生は感謝の心を込め、みんなからお金を集め、舎監先生、副舎監先生、おじさんおばさんにエンドチェーンの商品券を贈呈した。みんな涙を流して喜んでくれた。そこで副舎監先生が泣きながらおっしゃった。「学生諸君、ありがとう。でも、仙台で商品券をおくるならスーパーのエンドーチェーンではなく、デパートの藤崎だぞ。おんなじ一万円の商品券でも価値が違うのだ。覚えておきなさい。」
そのご、あのエンドーチェーンは形上なくなり、おいらが帰るものがなかった藤崎は生きている。
こじつけるなら石川ひとみがエンドーチェーンで、アグネスチャンやキャンディーズは藤崎デパートなのかな。
2018/03/24

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